昼とも紛う明るさで、ネオンがぎらぎらと明滅している。
「こんな所があったとはな」
人々が行き交う通りを歩きながら、白龍は周囲を興味津々に見回した。毒々しい色彩に瞬くネオンの看板。飲食店の入り口でげらげらと大声で騒いでいる、赤ら顔の集団。立ち並ぶ店の間、細い路地の入り口の所々には露出の多い格好をした女や派手な出で立ちの男が立って、通り過ぎる人々に熱い視線を投げかけている。初めて足を踏み入れたこの場がいわゆる歓楽街だということは、ある程度様子を見渡せばすぐに分かることだった。一本入った路地に突き出ている看板に時折躍る卑猥な文言が、この街がどういう性状の場所であるかを端的に物語っている。
「あまり大っぴらには知られてねえからな」
白龍の感想に答える男はどうやら明確な目的地があるらしく、眩いネオンの看板には目もくれずに人通りの中を進んでいく。その隣に並んで歩きながら、白龍は自分よりも頭一つ大きい半獣人の男の顔を見上げた。
「公司はここを関知しているのか?」
「そんなこと、下っ端の俺に聞いても分からねえよ。……ただ、公司の中でも知ってる奴ってのは、要はそういうことだろ。取り締まろうなんて誰も思わねえだろうよ」
男の言葉はもっともだ、と白龍は思った。こういった場所を知っている人は、つまりそういう人種だ。そういう人間が、ここを潰すような真似をするはずがない。仮に誰かが要らぬ正義感を振りかざしてこの場を一掃したとしても、似たような場所が別に出来上がり、そこでまた蔓延っていくだけだ。人間の後ろ暗い欲望は、永遠に尽きることがない。その欲望の掃き溜めのようなこの場所は、だから見逃され、潰えることを免れている。きっとこの歓楽街は、必要悪のような存在なのだろう。
「それにしても、この場所も知らねえで、これまでよく相手を見つけてたな……」
男の感想は、至極真っ当なものだった。恐らくこの男は、自分の隣を歩いている人間がまさか、地下世界に来たばかりだとは思っていない。そもそも白龍のような存在が例外中の例外なのだ。いくら何でも、そこまでの想像力を求めるのは無粋だし、白龍としても己の正体を明かすような悪手は打ちたくないから、知られていない方が好都合だった。
「……職場の男を喰い漁っていた」
「うわ、不健全」
立ち止まった男が、若干引き気味の表情をした。お前だってそのつもりだったろうが、という言葉が出かかって、白龍は喉元まで飛び出しかけたそれを飲み込む。
……実の所、喰い漁っていたという表現は、半分間違っている。職場の中で相手を作っていたのは間違いないが、そこまで不特定多数と関係を持ったわけでもないからだ。
かつてこの地下世界に拠点を構えていた箱庭という研究施設の中で、若くして入職した白龍は己の上司と肉体関係を持っていた。同僚の中でどれほど知られていたかは分からないが、実質はその上司の愛人のような状態だったと言っても良い。そもそも、その男は白龍をその目的で自分のプロジェクトに引き抜いたようなものだったし、白龍に向けてくるその視線の意図は、彼の下で働く前からとっくに気付いていた。
元々、異性よりも同性に興味を持つ方だった。そして自分自身の容姿が、同性を惹き付けるという自覚もあった。だから、自分を引き抜くことになった上司が向ける絡み付くような視線の意味もはっきりと分かっていたし、その視線自体を不快に思うこともなかった。一つ後悔することがあるとすれば、その男の性癖を知らずに愛人関係を承諾してしまったことだろう。当時、決して経験の多くなかった若い白龍はすっかりその男に体を躾けられ、男好みの体に開発されてしまった。男に従属し、奉仕し、そして蹂躙されることが、いかに背徳的な興奮をもたらすかを、骨の髄まで叩き込まれたといっても良い。だが、閉鎖的な研究施設の中で動物的な欲求を発散する手段など限られていたし、その欲求に打ち勝つことは容易ではないから、そういう相手を見つけたことは、白龍にとっても、そして上司の男にとっても、決して悪いことではなかった。要は、互いの需要と供給とが一致したのだ――それを手近な相手で済ませられるのならば申し分ないと、互いに信じ切っていた。
「組織の中で相手を見つける方が、外に繰り出すよりも合理的だろう」
「……アンタ、公司でも男漁りするつもりだったのかよ」
信じられないものを見るような目つきをした男を、白龍はじっと睨む。清廉潔白な相手に言われるならばまだしも、一体どの口でそういうことを言うつもりだ、というのが率直な心情だった。
「俺に色目を使ってきたお前に言われたくはないな」
そう言い返した瞬間、ぐ、と分かりやすく息を詰まらせた男が、気まずそうに目を逸らす。
この男と出会ったのは、白龍が担当するようになった半獣人の定期健診の場だった。最初に顔を合わせたときから、白龍にはすぐに分かった。じっとりと絡みつく、欲望を剥き出しにした視線。それは白龍が、これまでにも幾度となく向けられたことのある種類のものだった。
一度目は気付かない振りをして、泳がせた。二度目に自分の診察室を訪れた男はやはり、不埒な欲望を隠そうともしない目で白龍を熱心に見つめていた。隠すのが致命的に下手なのか、あるいはわざと隠していないのか、そんなことはどうでも良かった。結局、白龍とて一人前に欲を持った人間なのだ。地下世界に来て以降持て余していた動物的な欲求を発散できる相手を探していたとき、目の前に彼が現れたというだけの話だ。だからお誂え向きとばかりに誘い、煽ってみれば、この半獣人の男は呆気ないほど容易く、挑発に乗って手を出してきたのだった。
「いや、それはその……まさか抱かせてくれるとは思ってなかったし……」
しどろもどろになった男が、ばつが悪そうな顔をして白龍へと視線を戻し、白龍は自分よりも背の高い男の目を見返した。半獣人独特の、縦長の瞳孔をした眼。それなりに体を鍛えているという自負はあったが、そんな白龍よりも更に一回り大きな体躯。通り過ぎる人々の中には同じ半獣人の姿もあったが、彼らと比較してもなお、獣性を強く顕在させているこの男の体格は一際大きい。お陰ですれ違う人々の目線は自然と大柄な男の方に向いて、帽子を目深に被った私服姿の白龍はすっかり人混みに紛れている。
恵まれた巨躯の男は、それに見合っただけの力を持っていて、それ故に公司の師兵として勤務している。群れることに馴染めない多くの半獣人とは違い、イヌ科の動物の性質を持つ男はこの組織にも上手く溶け込んでいるようだった。彼は獣としての性質がかなり色濃く顕現しているようで、その特徴が肉体的な部分にも反映されていることは、初めてのセックスで十分すぎるほどに思い知らされていた。
「まあ、お陰で良い相手を見つけられた」
だからそれが、白龍の率直な感想だった。男を誘い、初めて抱かれた夜、これまでに見たこともないような大きさの、人間というよりもむしろイヌが持つような性器に激しく突き上げられ、普通では届かないような体の奥に何度も精を注ぎ込まれた。暴力を振るわれたわけでも、無理矢理体を暴かれたわけでもないが、どちらが上位に立つ者かということを体に刻み込むように犯されて、白龍はこの半獣人の男に従属する興奮を感じていたのだ。恐らく、過去にそう躾けられたというのも影響しているのだろう。自分よりも強い雄に組み敷かれ、獣の性質をよく現した巨根で体内を掻き回される行為は、あまりに背徳的で、そして暴力的なほどに気持ちが良かった。
「それは俺も同じだな。アンタみたいな相手と巡り会えるとは思ってなかった」
「そうか」
あの日のセックスに興奮していたのは、男の方も同じだったのだろう。白龍の安い挑発に煽られ、白龍を痛みと愉悦とで揺さぶり、そして白龍の中で何度も絶頂を迎えて、ひどく満足したような顔をしていたから。男は半獣人として恵まれすぎた体格のせいで、これまでは己の慾を満たすことも難しかったらしい。要するに、男と白龍との間で、需要と供給が一致したのだ。互いの性の捌け口として、お誂え向きな相手を見つけた。だからこうして、白龍は男に抱かれるため、この歓楽街に足を踏み込んでいる。
男が再び人通りの中を歩き始め、白龍もそれに続く。左右に伸びる路地を何本か通り過ぎたところで、男がするりと白龍の腰に手を回し、ぐい、と体が引き寄せられた。
「こっちだ」
そのまま連れ込まれる細い路地。毒々しく派手な看板が立ち並んでいた表通りから一転して、暗く閑散とした道が、建物の合間を縫うように続いている。一見、この先に店があるのかどうかも定かではない道を、しかし男は白龍の腰に手を回したまま歩き始めた。腰骨の辺りをするりと撫でる手つきに思わせぶりな意図を感じながら、白龍は男の隣を歩く。男の足取りは確かだが、あまりにも店の気配を感じない通りに、だんだんと不安が込み上げてくる。
「……本当に合っているのか?」
「目立たねえ作りになってんだよ」
素っ気ない男の口調とは裏腹に、その手は白龍の腰から次第に尻へと下りてきて、引き締まった尻をやわやわと揉むように掌が押し付けられる。思わず睨み上げた男は涼しい顔をしていて、白を切り通すつもりなのだと悟った白龍は溜息を吐くと、男の手を振り払うことを早々に諦めた。
「この辺はロクでもない輩も多いからな。アンタ、正体がバレねえように気をつけた方が良いぞ」
「お前は平気なのか」
「半獣人を見て、誰も公司の犬だとは思わねえさ。……アンタも、俺の連れって思われとけば平気だろう」
「だからと言って、歩きながら尻を揉むな」
「良いんだよ、恋人同士のノリだと思わせとけば」
何が良いのか全く分からないし、それは単にこの行動の口実としか思えないが、それを指摘しかけたところで、男の足が止まった。
「ここだな」
ビルの入り口、二重になった自動ドアの向こうに、無人のカウンターが見える。薄暗い照明の玄関は一見すると中の構造が分からず、看板が何もないことも相俟って、そこがそういう場所の受付だと全く気がつかなかった。もし白龍一人だったら、間違いなく素通りしていただろう。
「男同士で色々遊びたいなら、ここが一番いい」
そう言う男に体を引かれるまま、ビルの中へと足を踏み入れる。清潔感のある簡素なロビーには外から見えていた通り誰もおらず、カウンターにはタッチパネルが設置されてあって、そこで今空いている部屋の一覧と、室内の内装や設備の詳細を見ることができるようになっていた。初めてここを使う白龍に男が色々な写真を見せてくれたが、拘束具だらけの部屋や、鞭や蝋燭などの小道具が置いてある部屋の写真もあり、このホテルが一体どういった客層に向けたものであるかを理解するには十分だった。
「それで、どこにする気だ?」
白龍が尋ねる最中も、男の手は執拗に白龍の尻を愛撫し続けている。腰骨の辺り、一番敏感な部分を指で軽く引っ掻くように触られて、ぞわりと込み上げる奇妙な感覚に思わず体が震える。白龍の反応を面白がるように手を動かす男が、何枚かの写真を見比べてから、様々な淫具が準備された部屋を選び、予約のボタンを押した。
「アンタの体をたっぷり可愛がってやれる部屋にしようぜ」
ぴくりと体が強張る理由が、恐怖か、期待なのか、白龍には判別ができなかった。その反応を敏感に感じ取ったのだろう、へえ、と男が楽しそうな声を出す。
「もう興奮してんのか?」
「馬鹿は休み休み言え」
「強情ぶるなよ、今すぐケツ穴をほじくり回されたくて仕方ないんだろ?」
「っ、」
下品極まりない言葉を一笑に付すことができないのは、きっと白龍が期待してしまっているからだ。男に体を明け渡し、蹂躙されることを、心のどこかで待ち望んでいる。白龍は己の中の慾を堪えるようにぐっと歯を食い縛ってから、自分を面白そうに見下ろす半獣人の男の目を見上げた。相手のペースに一方的に振り回されるのは御免だったから。
「お前も、俺を今すぐ犯したくて仕方がないんだろう」
「……へえ。アンタも言うねえ」
男の瞳の中、どろりとした劣情の火が一気に燃え上がるのが分かる。カウンターの下から自動で出てきたカードキーを掴んだ男に半ば強引に引き摺られるように、白龍が男と共にエレベーターへと乗り込むと、男がぴたりと体を密着させてきて、白龍は大して広くもない箱の中の隅に追いやられた。筋肉質な男の体温を直に感じながら、白龍は己に体を押し付ける男の様子を伺う。鋭い牙を剥き出しにして笑う半獣人の男は、人目を憚らない恋人というよりは、盛りのついた大型犬という方が正しいように思われた。
「部屋行ったら、シャワー浴びるか?」
「いや、良い。……準備はしてきている」
なるべく平静を装って答えたが、ほんの少し声が震えた。男が一瞬目を丸くして、それからにいと笑い、白龍の目を覗き込む。獣の瞳に映り込んだ、表情を消した白龍の顔。だが自分の瞳の中にはきっと、この男と同じように、どうしようもない劣情の炎が揺らめいているのだろう。
「アンタ、とっくにその気じゃん」
「時間を無駄にしたくないだけだ」
ちん、とベルを鳴らすような音と共にエレベーターが止まる。開いたドアをくぐる男は白龍から手を離すつもりはないらしく、まるで獲物を巣穴に持ち帰る獣のようだと、白龍は体を撫でられつつ足を進めながら思う。この男はこれから白龍を食い尽くすつもりなのだろうから、その印象は当たらずとも遠からずといったところなのかもしれないが。
扉の前で止まった男が、カードキーを扉に翳す。かちゃ、とロックの解除される音。扉を開け、室内へと入って、二人の背後で扉の閉まる音がして。それが合図だったかのように、示し合わせるでもなく服に手をかけ、脱ぎ始める。何の躊躇いもなく全裸になって、着ていた服をクローゼットに仕舞い込んでから、白龍は同じく裸の男の体を――自分よりも一回り大きな巨躯の、その股間で存在を主張する逸物を見た。既に勃起していると言われても納得できそうな大きさのそれが、まだ兆しを見せ始めた程度でしかないことは、以前のセックスの際に嫌と言うほど白龍の体に刻み込まれている。これを受け入れるのだと考えるだけで、薄暗い愉悦が、じわじわと体に込み上げてくる。ごくりと唾を飲み込んだ白龍を見て、男がくつくつと喉の奥で笑った。
「相変わらず、そそる顔してんなあ」
「言っていろ」
さほど長くもない廊下を歩き、その奥の扉をまた開けて寝室に入ったところで、白龍は早速男の前に跪いた。半獣人の男の、人間らしからぬ形状の性器が目の前に差し出される。イヌ科の動物のものに似た性器。以前これを受け入れたときから、この性器の構造が形態学的にどうなっているのかという興味は尽きないのだが、今はより動物的な欲求が勝った。
骨の備わった弾力のある陰茎に手を添え、指でそろりと撫でてやれば、男の逞しい太股がぴくりと痙攣する。白龍は男の堪えるような表情を上目遣いに見上げながら、手を添えた陰茎の先端を舌で舐めると、人間の陰茎でいう亀頭の部分を口に含み、じゅる、と吸い上げた。
「くゥ、」
男が小さく喉を鳴らし、苦い蜜の味がじわりと口の中に広がる。尿道口から滴り始めた先走りを漏らさぬように飲み込みながら、白龍は次第に膨らむ逸物の先端を、顔を動かして口内の粘膜に擦り付けるように抜き差しする。口に入りきらないほどの大きさに膨らんだそれを飲み込むのはそう簡単ではなかったが、白龍はできる限り奥深くまで男根を誘い、裏筋を舌で舐め回して、男の性感帯を刺激する。
「う、ッあ、」
男の感じている顔を見上げ、その性器がどんどん質量を増すのを感じて、白龍は口に含んだこの逸物で貫かれる快感を想像せずにはいられなかった。じくじくと熱を持ち始める己の体。白龍の逸物も緩やかに勃起を始めていて、まだ何の刺激も与えられない肛門がひくりと物欲しげに疼く。早くこれを受け入れたいという気持ちで、自らの指で尻を解そうとした瞬間、ぱん、と男の手が白龍の頬を軽く打った。
「触んな」
痛みは全くなかったが、それでも白龍の動きを止めるには十分だった。白龍は思わず男の性器から口を離すと、驚きを隠せないまま男を見上げる。口淫を受けていた男は冷たい目をして、白龍を見下ろしていた。どちらが支配する側で、どちらが従属する側であるかを、明確に理解させる眼の色。従わされる立場であることを否が応でも体が認識して、背筋をぞくりと、冷たい愉悦が這い上がる。
「言っただろ、アンタの体をしっかり可愛がってやるって。だから自分でやるな、分かったか?」
「……ああ」
「分かったら、続けろ」
命じられるままに頷いて、白龍は再び男の逸物を口に含む。動物的な上下関係を体に叩き込まれて、より強い雄の前に膝を折り奉仕することに、白龍は興奮を隠せなくなっていた。
既に片手で抱えるのもやっとなほどに膨らんだ性器へとしゃぶりつき、喉へと擦り付けながら舌を這わせて、ひたすらに男へのフェラチオを続ける。口の周りを唾液と先走りとで汚して、期待に腰をぬらぬらと揺らしながら、見上げた男の目が愉悦で瞬くのを見た白龍は、添えた手を男の陰嚢に這わせた。そこだけは人間の形状に近い、重く熟れた陰嚢を柔く揉み、びく、と体を震わせた男の陰茎の先端をじゅるりと吸い上げる。その瞬間、男の低い唸り声が、白龍の頭上から聞こえた。
「ぐ……ッ!」
大きな手に、ぐいと髪を掴まれる。口内に差し込まれた陰茎がどくんと脈打ち、どく、と精液の奔流が、喉の奥に叩き付けられた。口の中で一気に広がる苦い雄の味。飲み込むのは決して好きではなかったが、この男に限らず、そうする方が大抵の相手は悦ぶから、白龍は男の長い射精を受け止め、噎せ込みながらも必死にその精液を嚥下する。竿の根本に備わった亀頭球がぼこりと膨らむのを目の当たりにして、自分の肛門が前回のセックスでどれほど抉じ開けられたのかを改めて認識した白龍は、己の下腹部がどうしようもなく疼くのを感じながら、ずるりと引き抜かれた男根を伝う精液をぴちゃりと舐め上げる。満足げな顔をした男が白龍の髪から手を離すと、今度は驚くほど優しい手つきで、白龍の頭を撫でた。
「ほんと、フェラすんの巧いな。めちゃくちゃ気持ちいい」
「……それはどうも」
返事をしながら、どうにもむず痒い気持ちがこみ上げる。支配的な一面と優しい一面とを使い分けられて、白龍は自身が徐々に男のペースに巻き込まれていくのを感じていた。それでなくとも、既に白龍は男に逆らうことができない。この男とのセックスには体を支配されるという背徳的な愉悦がつきまとって、癖になってしまう。
「じゃあ、アンタのケツもちゃんと可愛がってやるか」
そう言った男が室内の棚を開けるのを見て、白龍は男がこの部屋を選んだ理由である淫具の存在を思い出した。怖いもの見たさで立ち上がり、男の隣に近付いて、棚の中を覗き込む。派手な色をした大小様々な責め具が棚にずらりと陳列されている様に、期待とも恐怖ともつかぬ感情で思わず体が震える。
「これくらいで良いだろ」
そんな白龍の目の前で、男が一つのディルドを選び、取り出した。一般的な成人男性の男根よりは幾らか太く、そして長い代物で、更には人間のものには有り得ないイボが、男根をグロテスクに彩っている。男がそれを手に取ったということがどういう意味かは火を見るより明らかだが、その質量に腰が引けて、白龍は分かり切ったことを男に問いかけてしまった。
「それを、挿れるのか……?」
「何だ、嫌か? 俺のよりは全然マシだろ」
何言ってんだ、という顔で答える男の言葉は確かに事実だが、どう考えても比較がおかしい。そもそもまだ解されてもいない状況で、このディルドの太さは決して容易く入るようなものではないだろう。挿入の苦痛を想像してしまい、自分の顔が引き攣るのが分かった。その一方で、これから与えられるであろう苦痛混じりの肛虐への期待に、触れることを許されない穴がひくひくと痙攣して、自分でも驚くほどに体が欲情してしまっている。
「四つん這いになって、こっちにケツ向けろ」
白龍は言われるがまま男に背を向けると、その場で四つん這いになって男へと尻を突き出した。男の視線が突き出した肛門へと注がれるのを感じて、いよいよ疼きを止められなくなる。責めを待ち望むその穴が浅ましくひくついて、それを見られているという羞恥に顔が熱くなる。
「ほんと、やらしいケツしてんな。すっげー物欲しそうにしてる」
「うるさい、」
「早くケツ穴ほじってほしいんだろ? アンタの望み通り、好きなだけほじくり回してやるよ」
「っ、ヒ……!」
突然細い何かを肛門に突き入れられ、白龍は大きく身を仰け反らせた。それ自体は大した刺激ではないが、ずっと触れたいのに触れられていなかった部分をいきなり刺激されて、待ち望んでいたものが与えられた快感に腰がびくんと跳ねる。そんな白龍を面白がるように男が笑って、ぶちゅぶちゅと絞り出すような音と共に、腸内へと生温い何かが注がれていく。
「これくらいローション使えば、いきなりでも何とかなるだろ」
「あ、ぅ、」
ボトルの先端を突っ込まれてローションを注がれたのだと、その言葉を聞いてようやく白龍は理解した。ぷつりと抜かれるボトルの先端、甘ったるい匂いの液体が尻の割れ目から陰嚢にまでも伝い落ちて、その感触にさえもぞわぞわと体が震えてしまう。ここまで来れば、次に何をされるかは分かり切っていて、快楽に貪欲な体が否応無く興奮させられる。ゆら、と腰を揺らす白龍の背後、ぴたりとディルドの先端が肛門へと押し当てられて、次の瞬間、めり、と襞を抉じ開ける暴力的な感触が白龍を襲った。
「クぅッ、ぅあ……!」
「力抜け。余計キツいぞ」
本来排泄器官である箇所に異物を挿入され、ひくつく襞をめりめりと押し開かれていく。あまりの圧迫感にがくがくと体が震え、白龍は必死に浅い呼吸を繰り返してそれをやり過ごそうとした。ローションの滑りも手伝って、ディルドはさしたる抵抗もなく、直腸の襞を掻き分けながら、少しずつ白龍の体内へと入り込む。潤滑油をたっぷりと注がれたおかげで痛みはほとんど無いが、ディルドが進むたびに内臓を押し上げられて、その圧迫感が白龍の体躯をぶるぶると痙攣させる。
「っ、ハぁ、くゥ……」
ぼたりぼたりと汗が顎を伝い、唾液と混ざり合って床に滴り落ちる。どれくらい入ったのか知る由もないが、男がディルドを進める動きを止めて、息を整えかけたのも束の間、今度は中に入った責め具をずるりと引き抜かれた。
「あがッ、やめっ、ぃイっ!」
ディルドに備わったイボがぞりぞりと腸壁を擦りながら引き抜かれ、そしてまた奥へと突き入れられる。ぐぽ、ぬぽ、と聞くに耐えない水音を響かせて男がディルドを抜き差しし、白龍の肛門を容赦なく責め立てる。肛門の縁が、熱く熟れた腸内が、その壁の内側にある前立腺が、抜き差しするディルドの先端やそのイボでごりごりと抉られ始めて、早くも耐え難い快感が、白龍の体を震わせつつあった。男もそれを分かっているのだろう、まるで品定めするようにディルドを動かして、白龍の中の敏感な部分を探り当てようとする。ごりゅ、と一際大きいイボに前立腺の部分を擦られて、体内を駆け巡る愉悦に頭ががんがんと揺さぶられる。
「ィぎ、ッ、あ、ンう……!」
「この辺みたいだな?」
「ぁア、や、んふゥ、ヒっ!」
一度当たりをつけられた襞の奥を抉るように何度もイボが往復して、快楽のどん底に突き落とされる。擦られる内壁がびくびくと痙攣し、白龍の足の間、ぱんぱんに膨らんだ逸物が腰を揺らすたびにぶるりと揺れて、その刺激さえも今の白龍にとっては毒だった。そろそろ限界が近付いている白龍への責めを男の手は緩めることなく、大きく引き抜いたディルドをずくりと思い切り押し進め、その先端に前立腺を押し上げられて、白龍の視界が真っ白く弾けた。
「あ、がァっ……!」
全身を走り抜ける暴力的な快感。がく、がくと全身が震えて、ディルドを銜えている肛門が思い切り収縮する。かつて男の手で開発された体は肛虐に従順で、射精せずとも快楽に溺れる方法が沁み付いていたから、白龍は眩暈を覚えながら、襲い来るドライオーガズムの波に身を委ねた。じわじわと全身を包み込み、もみくちゃにするような恍惚に、白龍は喘ぎ、身をくねらせる。だがそこで突然、ばちんと大きな音と共に尻に激痛が走り、白龍は思わず悲鳴を上げた。
「ひぐッ!?」
四つん這いの格好で突き出していた尻に、容赦なく振り下ろされた掌。じんじんとひりつくような痛みが、絶頂を迎えたばかりの愉悦と混ざり合って、痛みさえも快楽であるような錯覚を覚えてしまう。は、は、と開きっぱなしの口から涎を垂らす白龍の、汗ばんだ髪を掴まれ引き上げられて、男の冷酷な、支配者の眼差しと目が合って、ぞくりと被虐の興奮が、体の奥底をじわじわと浸食していく。
「アンタ、俺が前言ったこと、忘れたのか?」
「う、ぁ……?」
「イくときは言えって言ったよな」
「……!」
耳元で囁かれ、思い出した。前回のセックスの最中にそう命じられ、言えなかった罰として性器を責められた記憶。罰、という言葉を咄嗟に思い出し、恐怖でぞくりと白龍の体が震える。この男がこう言うということは、何かしらの罰があるはずだった。
「ちゃんと言えるようになるまで躾けてやるよ」
「ぁ、」
けれども体が震えるのはきっと、恐怖のせいだけではない。自分でも分かっていた。この男に支配されることに、白龍はどうしようもなく欲情しているのだ。
四つん這いでディルドを突っ込まれたままの白龍を置いて、男が一度棚の方へと向かう。棚の中を物色し、程なくして目当てのものを見つけたであろう男が戻ってきて、そして目の前に翳されたものを見て、白龍は息を呑んだ。
「待て、お前、それ……」
まるで数珠が繋がったような形状をした、細長い金属製の棒。それが何なのか、白龍は知っている。かつての相手に、同じような道具を用いて散々責められたことがあるからだ。
男にとっては白龍の反応は予想通りだったのだろう。尿道の責め具を眼前にちらつかせて、人の悪い笑顔を浮かべてみせた。
「これが何か分かるってことは、チンコも開発済みなんだろ?」
「っ……」
男が白龍の背後に回り、腰を下ろす気配がしたかと思うと、またもやばちんと尻を打ち据えられて、白龍は悲鳴を押し殺しながら太股を震わせた。苦痛でしかない平手打ちなのに、びくりと収縮した肛門がディルドのイボに刺激されて、その愉悦と混じり合い、痛いのか気持ちいいのか次第に分からなくなっていく。
「それじゃ、チンコが見えねえだろ。しっかり足広げてしゃがめ」
有無を言わせない男の言葉に、逆らう術がない。白龍はこくりと頷くと、男に言われた通り、足を開いた格好でその場にしゃがみ込んだ。隠すことのできなくなった股間、がちがちに勃起した性器から先走りがぼたぼたと漏れて、失禁したかのように陰毛をびっしょりと濡らしている。男の手が背後から回り込んでその陰茎を無造作に掴み、いきなり与えられる無遠慮な刺激に白龍の全身が大きく痙攣する。
「ぃギッ!」
「こっちもぐちょぐちょに濡らしてんじゃん。弄られんの、そんなに楽しみか?」
「ちが、ッ、やめ、ぁあアっ!」
握り締められた陰茎の先端にブジーを押し当てられ、ずりゅ、と尿道へと押し込まれ、痛みと不快感とが一気に押し寄せる。本来有り得ない方向に突き進む異物、数珠状になった一つ一つの球にぬぷりと尿道口をこじ開けられ、ずぶずぶと金属棒が内側へと挿入されていく。それはただ苦痛でしかなかったが、男が半分ほど入ったブジーをおもむろに先端近くまで抜いた瞬間、おぞましいまでの快楽が下腹部を走り抜けて、びくりと腰が大きく跳ねた。
「ぃイッ、あヒっ、ひ、ぐゥ!」
「尿道責められてビンビンにおっ勃てて、ケツ振ってんのかよ、この変態」
男が笑いながら、何度もブジーを抜き差しし始め、尿道の粘膜をぐりぐりと責め立てる。押し込まれる苦痛と抜かれる快楽とがごちゃ混ぜになって頭をがんがんと揺さぶり、麻痺しつつある脳は痛みさえも快楽として認識し始めていた。男の手の中、弄ばれる陰茎は勢いが衰えないばかりか、ますます高く天を突き上げて、白龍がこの責めで興奮していることを如実に示している。激しく腸壁が収縮し、中に挿入されっぱなしのディルドを嫌でも感じてしまい、敏感な二カ所を同時に襲う悦楽に瞬く間に引き摺り込まれていく。
「っア、がァッ、ひィあ……っ!」
下腹部に渦巻く劣情の熱が、一気に昂り、燃え盛る。ぐぷ、とブジーをぎりぎりまで引き抜かれて、射精にも似た快感が全身を走り抜け、痛みとごちゃ混ぜになったどん底に放り込まれる。あまりにも暴力的な愉悦にひとたまりもなく、熱い奔流が尿道の中をせり上がるのを感じて、ぶじゅ、と白濁がブジーの隙間から漏れ出しそうになった瞬間、細い金属棒を思い切り奥底まで突き入れられた。
「ぉ、ごォ、っ!!」
射精しかかった精液が堰き止められ、尿道の中で行き場をなくして荒れ狂う。内側の粘膜がじんじんと痺れて、その熱い液体が逆流する感覚さえも快楽と化して、白龍は腰をがくがくと震えさせる。頭をむちゃくちゃに揺さぶるような衝撃、射精したという感覚は確かに存在するのに、その行為を物理的に阻まれて、寸止めされたようなもどかしさがじわりと込み上げるる。は、は、と荒い呼吸をしながら見下ろした自らの陰茎はまだ固く勃ち上がっていて、ブジーと尿道の隙間からじわじわと白濁が溢れ、白龍の股間を白く汚していく。その光景をぼんやりと見つめていると、男の手で無造作に陰茎を扱き上げられ、そのあまりに直接的な刺激に白龍は大きく体を震わせた。
「ぃッ、ひぐゥ……!」
「ブジーでイッてんのか? ほんと、やらしい体してんな」
男の指摘は紛れもない事実で、けれどもその屈辱的な現実を突きつけられて、白龍はぐっと唇を噛む。男の手によって一方的に快楽を叩き付けられ絶頂を迎えさせられて、それを詰られた体はいよいよ男への隷属の屈辱と快感とで支配されつつあった。ブジーをぱちんと指先で弾かれ、駄目押しのように無理矢理に快楽を与えられ、自分が強者に屈する側であることを、体に教え込まれていく。
「っていうか、アンタ、またイくこと言えてねえし」
「っ、それ、は……ッ」
冷や水を浴びせられたような衝撃を受けて、白龍は一気に冷静になり、ぞく、と背筋を震わせた。あまりの苛烈な責めにそんなことを言う余裕もない、そう弁明しかけたが、そんな言い訳が許されないことは分かっていた。どれほど理不尽な要求だとしても、男が命ずる側で、白龍は従う側なのだ。怯えた目で振り返った先、背後の男がにやりと獰猛な笑みを浮かべて、自分が逆らえない弱者であることを、否応無く理解させられる。
「物覚えの悪い体には、しっかり叩き込んでやらなきゃなあ」
ぐいと背中を押されて、白龍は再び四つん這いの姿勢を取らされた。深々とディルドが突き刺さった尻を突き出す格好で、無様にひくつく肛門を男に曝け出す。男がディルドを掴み、小さく抜き差しを始めて、再び与えられる肛虐の快感に、ぶるぶると太股が痙攣する。体は快楽を貪欲に求めていて、耐えきれず腰を揺らす白龍の肛門から、ずりゅ、ぬちゅとディルドがゆっくりと、引き抜かれていく。
「イ、ひ、くゥッ、」
どろどろに溶けた腸内が、赤く熟れた肛門が、凶悪なイボの通り過ぎる刺激にびくびくと戦慄く。責め具を引き抜かれた瞬間、ぶぴゅ、と淫猥な音と共に肛門からローションが飛び散り、白龍は羞恥のあまり耳を塞ぎたい思いに駆られたが、それさえも興奮を煽る材料になって、銜える物がなくなった肛門がひくひくと物欲しげに開閉するのを止めることができない。そんな後孔を男の無骨な指が割り開き、逃れようのない快楽に白龍は身を仰け反らせる。
「っ、ア……!」
ぽっかりと肛門を広げられ、中の赤く蠢く粘膜までも視姦されて、白龍は震えることしかできない。男は指で白龍の排泄器官を広げたまま動こうとせず、あまりのもどかしさに気が狂いそうになる。ここまで来たなら、早くその太い逸物で体を貫かれたくて仕方がないのに、男は焦らすように、指で白龍を苛むだけだ。
「ケツ穴をチンコでハメられたいなら、ちゃんとそう言え」
あまりにも屈辱的な命令に白龍は唇を噛み締めるが、体はどうしようもなく男の逸物を欲して疼いていて、逆らうことなど、できるわけがなかった。
「早く、お前のペニスで、尻を犯して、くれ……っ」
舌を噛み切りたくなるような言葉をどうにか絞り出し、待ち望むように尻を突き出す。だが男はなおも指でぐちぐちと肛門を割り開くだけで、白龍の望む物を与えてくれない。どこまでも焦らされ続けて、白龍はもう、男の凶悪な性器のことしか考えられなくなり始めている。
「何高尚ぶってんだ? チンコでケツ穴かき回されてメスイキしたけりゃ、それくらい言ってみろよ」
「ッ、お、お前のペニスを、尻の……穴に突っ込んで、かき回して……め、メスイキ、させてくれ……!」
屈辱的な懇願を口にさせられ、白龍の中の矜持がぼろぼろと崩れ落ちて、残るのは強い雄に屈服しているという被虐の愉悦。男に見せつける肛門がびくびくと痙攣して、この辱めにさえも興奮していることを嫌というほど認識させられる。無様な姿を晒しながらすっかり欲情した白龍の尻から指が離れ、入れ替わりにぴたりと灼熱の先端が押し当てられて、白龍は期待で喉を慣らした。それだけで頭がどうにかなってしまいそうで、まるで男の陰茎に擦り付けるように、ぬらぬらと尻を揺らしてしまう。
「まあ、上出来だ」
「あ、ぁガ、オごぉッ……!」
めり、めり、と圧倒的な質量の熱が、白龍の肛門を抉じ開ける。先程まで尻を苛んでいたディルドとは比較にならない太さの逸物が、期待でひくつく肛門を容赦なく刺し貫き、内側の粘膜を抉りながら白龍の奥へと進んでいく。裂けそうなほどに引き延ばされる括約筋、あまりの質量がもたらす圧迫感に、白龍はなす術もなく喘ぎ、体を震えさせることしかできない。ずり、ずり、男が少しずつ陰茎を押し込むたび、直腸の襞という襞が引き延ばされ、擦り上げられて、凶暴なまでの快楽に全身が呑み込まれて、意識が飛びそうになる。だがその瞬間、ばちんと尻に平手打ちの激痛が走り、痛みで全身が強張った白龍は思わず肛門を締め付けてしまい、己を貫く逸物のあまりの大きさに絶叫を上げた。
「ひ、ギいッ!!」
がくがくと震える白龍を貫いたまま、男の動きが止まる。じんじんと赤く腫れた尻肉を大きな手が撫で回し、もう一度、ばちんと平手をお見舞いされた。張り裂けそうな痛みが痺れるような快楽と混ざり合い、白龍は自分の体が、浅ましく調教されつつあることを悟る。初めてのセックスの時もそうだった。この痛みも悦楽だということを体に刻み込むように男は白龍の尻を打ち据えてきて、白龍の体は男の目論見通り、痛みさえも快楽であるかのように錯覚し始めている。
「さっきイくって言えなかった罰。俺は動かねえから、自分でケツ振れ。動きを止めたらケツ叩くからな」
「……!」
冗談じゃない、と言おうとしたが、今の白龍には拒否権など存在せず、絶対的な支配者の前に屈するしか選択肢がない。そして男が罰と言った以上、男は自分が満足するまで白龍に救いの手を差し伸べるつもりはないだろう。白龍は犬のような荒い呼吸をどうにか整えると、ごくりと唾を呑み、覚悟を決めて、ゆっくりと腰を前後に振り始めた。
「っ、おふッ、ァ、ガぁッ!」
目の前に火花が飛び散るような衝撃。ほんの少し腰を振るだけでも、限界まで引き延ばされた肛門を肉棒がごりごりと前後して、腸内を抉られる快感に脳が痺れていく。ごりゅ、ずちゅ、卑猥な音を結合部から漏らしながら、白龍は腰を振って男へと奉仕する。そうして腰を振っている白龍の中に、前回のセックスの、これまで届いたこともないような直腸の向こう側を犯された感覚がありありと蘇る。もっと大きく腰を動かさなければそれに届かないのは分かっていたが、あの暴力的な快楽を再びぶつけられることが恐ろしくもあり、どうしてもそこまでの深さを受け入れることができない。そもそも少し腰を動かすだけでも、張り裂けそうな巨根を受け入れる白龍にとっては精一杯なのだ。
そうやって必死に腰を振る白龍の尻を、またしても男が叩き据える。白龍が悲鳴を上げて仰け反るが、そこで腰が止まったのを責めるかのように何度も何度も平手が振り下ろされて、白龍の引き締まった尻が、真っ赤に腫れ上がっていく。
「おら、もっと奥まで行けんだろ? アンタの大好きな結腸に届いてねえぞ?」
「ひギッ、おゴぉ! たたくの、やめッ、ぃ、いヒィ!」
ひんひんと情けなく泣き叫びながら、白龍は許しを乞うように腰を動かし始める。より大きく前後に腰を揺らし、より激しく襲い来る悦楽の中、尻を後ろへと大きく突き出した瞬間、ごり、と巨大な逸物の先端に、結腸への曲がりをずどんと突き上げられた。
「ぉほォッ、ぃ、いぐゥッ!」
来る、と分かった瞬間、白龍は恥も忘れてそう叫んでいた。弾けるように瞬く視界、がくがくと全身が震え、男の性器を受け入れる腸壁がぎゅうと収縮する。ブジーで堰き止められた尿道の隙間から透明な蜜をぶしゅうと滴らせ、開いた口からぼたぼたと涎を垂らし、絶頂の余韻に全身を食い尽くされる白龍には、とても腰を動かす余裕などなくなっていた。それが当然許されるわけもなく、男の手によって、尻を強かに打ち据えられる。
「ぎゃウッ、も、ゆるし、ひギッ!」
「自分だけ気持ちよくなってんじゃねえぞ。とっととケツ振れ」
「ぁ、わかッ、ぐヒィ、ぉ、ほオんッ!」
がくがくと体を震わせながら、白龍は男への奉仕を再開する。腰の動きが小さいと詰られては尻を叩かれ、結腸を犯される愉悦で腰が止まると尻を叩かれて、猿のように真っ赤に腫れた肌はもう、痛みを与えられることに愉悦しか感じなくなっていた。ひっきりなしに喘ぎながら腰を揺らす白龍が尻を叩かれ興奮していることが伝わっているのだろう、男も白龍を煽るように何度も尻を平手で叩いては、叱責の言葉を投げかける。ごりゅ、ぬちゅ、肛門が赤く捲れるほどの勢いで激しく腰を振り、巨根の先端に結腸を突き上げられた瞬間、圧倒的な快感が下腹部から全身を駆け抜け、びく、と体が仰け反った。
「ほゴッ、イくッ、ぁガ、イくぅ……!」
頭の中で何かが弾けるような衝撃。ドライオーガズムに呑まれ、白龍の肛門が男の陰茎をぎちりと思い切り締め付けて、朦朧とする意識の中、白龍は男の呻き声を聞いた。どぴゅ、と体の奥底に注ぎ込まれる奔流、陰茎の根本の亀頭球がぼこりと膨らみ、肛門がめりめりと拡張される。裂ける寸前まで押し広げられ、息ができないほどの恍惚に崩れ落ちそうになりながら、白龍はどぽどぽと大量の精液が結腸に注がれるのを感じていた。長い射精が終わり、まだ亀頭球の膨らみによって繋がったままの尻を、男の手が優しく撫でる。散々叩かれて赤く腫れ上がった尻はそれだけの刺激でも敏感に愉悦を感じてしまい、白龍は男の手に擦り付けるように、尻をぬらぬらと振ってしまう。
「よく出来ました」
「ァ、ああ……っ、」
頭がどうにかなってしまいそうだと、白龍は思う。拒否権もないまま理不尽な行為を一方的に強いられているのは間違いないのに、それを優しく褒められることに体が悦びを感じてしまっている。痛みと快楽とを絶妙な塩梅で与えられ、白龍の体はどうしようもないほど、この半獣人の男に隷従してしまっていた。今もこうやって無様に腰を振り、じんじんと腫れ上がった尻を男に擦り付けて、更なる快感を貪欲に求めてしまう。男が笑みを漏らす気配がして、腰を掴んでいた手が白龍の体に回されたかと思うと、ぬちゅ、と卑猥な水音と共に、尿道のブジーがぐりぐりと動かされた。
「こっちもイイ感じに気持ちよくなってきただろ?」
「ッあ、ンほ、ぉオッ……!」
小刻みに抜き差しされ、尿道の粘膜がじんじんと痺れ、込み上げる悦楽にびくりと腰が跳ねる。気づけば体はすっかり尿道への責めで悦を感じていて、白龍は男の手に合わせて無心で腰を振ってしまっていた。
「アンタの体、エロすぎて、ほんと癖になっちまう……」
「ぁア、んふゥ、ッひ……!」
抜けることがないように根本ぎりぎりまでブジーを押し込んで、男の手が白龍の性器から離れる。刺激がなくなったことに物足りなさを覚えた白龍は、己の肛門を限界まで拡張していた圧迫感が幾分か和らいだことに気が付いた。ずる、と逸物が内壁を擦る感触、めりめりと抉じ開けられていた腸内から男根が抜かれて、どうにか一息つこうとしたところで、ずくりと肛門に何かが捻じ込まれ、再び押し上げられる。
「ひゃぐッ!?」
男の逸物と比べると太さも長さも可愛いものだが、ごり、と突き出たイボで腸壁に埋もれた前立腺を抉られ、白龍は悲鳴を上げた。肛門を慣らすために使われたディルドが、再び白龍の奥へずんずんと侵入する。男の巨根ですっかり緩まった肛門は容易くディルドを銜え込み、ぎちりと物欲しげに締め付けてしまって、ごつごつと飛び出るイボの感触に白龍はびくんと尻を震わせた。
「アンタには見えねえだろうけど、アンタのケツ穴、めちゃくちゃ美味そうにディルドしゃぶってるぜ」
「い、言わなくて、いい……!」
暴力的なまでの快楽から解放され、幾分か冷静さを取り戻した白龍に、今更ながら羞恥心が込み上げる。涙と汗と涎でべとべとになった顔で振り返り、白龍は男を精一杯睨みつけるが、男はそんな白龍の反抗など意に介さぬかのように、ディルドを駄目押しのように指でぐっと押し込んだ。内臓が押し上げられる感覚、う、と息が詰まった白龍の尻を、男がそっと撫でる。痛み混じりの快感がじんじんと下半身に響いて、快楽の渦の中に逆戻りしそうになる。
「まあ、そんだけ根本までしっかり銜えてたら、そう簡単には抜けねえだろ。一安心だな」
喘ぎを必死に噛み殺していた白龍は、男の言葉に不穏な響きを感じ、頬をぴくりと引き攣らせた。
「何が、言いたい……?」
男がにっと笑い、寝室の奥、部屋の隅の一部が鏡張りになっている所を顎で示してみせる。
「あっちに鏡があるの、見えるだろ? 次はあの前でヤろうぜ」
「は、」
「歩いてる最中にそれ抜けるとつまんねえだろ。ほら、さっさと立てよ」
「っぐゥ!」
撫でていた尻をばちんと叩かれ、白龍は呻く。まるで鞭で急かされる家畜のように、痛みに喘いだ白龍は体を起こそうとして、体内に押し込まれたディルドの位置がぬちゅ、と動いた刺激にびく、と肩を震わせる。じんじんと下腹部に広がり始める澱んだ熱、白龍がその刺激で動けずにいると、男が白龍の肩に手を回し、ぐっと腕に力を込めるのが分かった。
「おい、待てッ、」
「休んでる暇ねーよ。ほら、立て」
「ぁ、ひぎッ、まっ、ヒんッ、いくっ……!」
体を引き上げられ、無理矢理立ち上がらされて、肛門の中に捻じ込まれたディルドが大きく動き、大きなイボが直腸の襞の奥にある前立腺を抉る。散々に弄り回され敏感にされた箇所への刺激は白龍にとってはひとたまりもなく、立ち上がった瞬間がくんと膝が震え、白龍は男の体にしがみついた。真っ白に弾ける視界、肛門が激しく収縮し、ディルドの凹凸さえ感じてしまうほどに強く締め付ける。射精を許されない性器がびくびくと脈打ち、肛虐による絶頂に興奮しているのは誰の目にも明らかだった。
「ちゃんとイくことを言えるようになってきたな。いい子だ」
「ンぅ……、」
男の手に頬を優しく撫でられて、白龍は自分がますます男の言いなりになっていくのを感じていた。男に飴と鞭を使い分けられ、体に沁み付いていく隷属の癖。それが男の狙いだと分かっていても、白龍自身がそれに愉悦を感じているのだから、逆らうことなどできるはずもない。
男の体にしがみついたまま、白龍は出来る限り真っ直ぐ立とうとするが、尿道と肛門に埋め込まれた玩具による違和感から逃れられず、どうしても無様な蟹股の姿勢になってしまう。とても一人で歩けるような状態ではなく、白龍は足を不格好に開いたまま、男に縋ってのろのろと歩く。白龍に歩調を合わせた男が鏡の前に辿り着いた、合図とばかりに軽く尻を叩かれた。ぴり、と痺れるような快楽が背中を走り抜けて、白龍は小さく喘ぐ。
「足開いて腰落とせ。そしたら一人で立てるだろ」
「ッ、くぁ、」
大きな鏡には、己の体液でべとべとに汚れた白龍の姿が映っていた。蟹股に足を開いて腰を僅かに低くして、隠すものも何もない格好で、鏡に全てを曝け出している、羞恥で目を背けたくなるほどの卑猥な姿。固く勃起した陰茎にはブジーが刺さり、白濁混じりの蜜がひたりひたりと滴っていて、ほぼ根本まで押し込まれたディルドは、正面からはほとんど見えないほどだった。
「これ、どうやって、抜くつもりだ……?」
不格好に腰を前後に揺らして、辛うじて見えるディルドの先端。不安に駆られた白龍が男の顔を見上げると、男は一瞬考えるような素振りを見せて、それから冷たい目で白龍を見た。
「そうだな……アンタが頑張ってケツから放り出してみるか? クソするみたいにやりゃあ、出来るだろ」
言われた言葉の意味が一瞬理解できず、そして理解できた瞬間、あまりの羞恥に白龍の顔が青褪める。
「そんなこと……出来るわけが……」
「へえ、出来ねえの?」
許しを乞うように見上げた男の、ぞっとするような笑みにどん底へと突き落とされる。この男は、白龍を徹底的に調教するつもりなのだ。容赦なく辱め、抗えない快楽を刷り込んで、白龍に上下関係を刻み込もうとしている。いや、恐らく、そのやり方はとっくに実を結んでいるのだろう。既に白龍は、それがどれだけ屈辱的なことであっても、男の命令を拒めなくなっていたから。
白龍は鏡に映る自分自身に目線を戻し、覚悟を決めると、ぐっと腹に力を込め、まるで排泄するように、ディルドを肛門から放り出していく。ぐずぐずに熟れた襞を、赤く充血した肛門を、ディルドから突き出たイボがごり、と擦り上げて、排泄にも似た行為に、嫌というほど欲情してしまう。
「ひぐッ、んクゥ、……っ!」
イボにもたらされる尻の疼きに抗えず、白龍は男に見られる目の前で無様に腰を振りながら、めりめりとディルドの排泄を続けていく。白龍は己の醜態から目が離せない。肛門の襞が厭らしくめくれあがって、イボだらけの責め具が少しずつ顔を覗かせ、まるでグロテスクな尻尾が肛門から生えているかのようだ。みち、みち、と次第にディルドが押し出され、半分ほどの長さが体の外へと出た頃、重力に負けた責め具が肛門を厭らしく捲り上げながら、ずるりと一気に床へと落ちる。ディルドの突起が恐ろしい速度で腸内を、肛門を抉って、白龍はもう耐えられなかった。
「ンほォッ、いっ、いぐゥ……!」
蟹股の腰をがくがくと揺らし、今日何度めか分からない絶頂に身を仰け反らせる。ディルドという栓を失ったことで、中に出された白濁とローションの混ざり合った液体が、ぶぴゅ、と聞くに耐えない音を立てて床一面に飛び散って、緩みきった肛門からは白濁が、ひたひたと太股を伝い落ちていく。ほぼ排泄行為に等しいものを見られた羞恥と背徳感とに唇を噛み締めながら、その行為にどうしようもなく欲情してしまっている白龍は、折檻を受けて敏感になった尻を男に撫で回され、あまりにも凶暴な快楽に悲鳴を上げた。
「ひゃ、ひぐッ、う……!」
「こんなことでメスイキするんだ? アンタ、ほんとやらしい体してんな」
男に良いように体を蹂躙され、ぶるぶると震えながら、白龍は己の尻を撫でる男を振り返る。引き締まった巨躯の股間、あまりにも巨大な逸物が固く勃起し、破裂せんばかりの勢いで充血しているのを見て、白龍は体液でどろどろに汚れた顔に、精一杯の笑みを浮かべた。
「お前だって……俺を見て、発情してる癖に……」
いくら支配され、隷属させられようとも、ただ一方的にやられるままなのは癪なのだ。安い挑発で男を煽ってみせれば、男が一瞬目を丸くして、それからにやりと、獰猛な捕食者の笑みを浮かべた。
「アンタ、ほんと堪んねえ」
ぐっと背中を押され、上体を鏡へと押し付けられる。自然と尻を突き出す姿勢になって、いよいよ訪れるであろう肛虐による快楽への期待にぞくぞくと体を震わせながら、白龍は自分の背後、その灼熱を尻の割れ目にぴたりと宛がう男に腰を淫らに擦り付けた。
「お前……俺の尻に、早く突っ込みたいんだろう?」
「……ああ、アンタのケツ穴、ブチ犯したくて仕方ねえよ」
逸物の先端が、ひくつく肛門に突き入れられる。めり、と肛門の縁が拡張され、一度男に割り開かれた直腸へと容易く突き進んで、一片の情け容赦もなく、男が思い切り腰を打ち付けた。
「ぎッ、アがっ、オごおォッ!」
ごりゅ、と内臓の奥が抉られる感覚に、白龍は仰け反る。ぱん、と肉のぶつかり合う音、男の腰が白龍の尻へと叩き付けられて、じんじんと腫れ上がった尻がその痛みをびくびくと感じてしまい、二重の快楽に白龍は身を捩った。男が大きく腰を動かして、裂けそうなほどの太さの逸物が肛門を捲り上げながら引き抜いては、白龍の一番奥を壊さんばかりの勢いで突き上げる。あまりにも激しい抜き差しと結腸への責めとで、仰け反った白龍の喉から、ひっきりなしに野太い喘ぎ声が迸る。体の支配権を失って、何もかもを男に蹂躙されて、自分でも止めようがないのだ。ぱん、ぱん、と尻を打たれる乾いた音の合間に、ぬちゅ、ぶびゅ、と淫猥な水音を響かせながら、男の陰茎が白龍の肛門を往復し、その内部を容赦なく抉っていく。
「結腸ハメられんのが、そんな嬉しいか?」
「あッ、ヒぎッ、ぎもっ、ちいィッ……!」
腰を叩き付けられるたび、結腸へと続く曲線の部分を陰茎の先端で突き崩され、味わったことのない快楽に白龍の全身が痙攣する。押し寄せる愉悦に思考がどろどろに蕩けて、淫らに腰を振りながら男を受け入れ、男に与えられる快楽を貪る。白龍の体内で一気にせり上がる熱、とっくに限界が近付いていて、白龍はがつがつと男に揺さぶられながら、半ば譫言のように口を開いていた。
「あガ、ォほオ、イ、ぃクッ、イッ、ちゃうゥッ!」
「ああ、存分に、メスイキしろよ……っ!」
ごつ、と内臓が破裂しそうな勢いで結腸を突き上げられ、びゅる、と奥底に精液を注ぎ込まれる。肛門をめりめりと拡張され、体の奥底に種付けされる恍惚が全身を駆け巡り、信じられないほどの快楽の渦に突き落とされる。がくん、がくんと壊れたように体を揺らし、冷たい鏡にどうにか縋り付いて、白龍は己を翻弄する絶頂の波に震えることしかできない。
「ぁ、う、おごォ……っ」
ぼこりと膨らんだ亀頭球の刺激にさえも欲情して、ぜえぜえと涎を垂らして喘ぐ白龍の顎を、男が掴む。己の体液でどろどろに汚れ、押し寄せる劣情の波にどろどろに溶けた白龍の顔を振り向かせ、男が上気した顔に嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「アンタの顔、めちゃくちゃエロいな……」
「あ、ふゥッ、ぅ」
「なあ、キスしてもいい?」
まだぼんやりと蕩けた思考で白龍が頷けば、男が唇を押し当て、れろ、と舌を唇に這わせてきた。歯列をなぞり口内へと侵入する、ざらついた長い舌。この半獣人の男は、こんな体の部分まで獣に近い性状をしているらしい。舌のざらつきに口内を舐め回され、唾液を掻き混ぜられて、ひりつく刺激のもたらす快楽に白龍は目を細める。されるがままになっている間に舌が解け口が離れて、どこか思案顔をした男が、白龍の目を覗き込んだ。
「……嫌じゃなかったか?」
白龍は男の真意を掴めないまま、ゆるゆると首を横に振る。ここへ来てそんなことを尋ねる男の意図がよく分からなかったが、男は白龍の返答に満足したように、繋がったままの腰を擦り付けてきた。白龍の中を貫いている性器が内臓をごり、と押し上げて、圧迫感とそれ以上の快感とで頭ががんがんと揺さぶられ、白龍は掠れ始めた声で喘ぐ。
「ぁ、あァ、ふゥぁ……、」
突き上げられる腰を無意識のうちに揺らしながら、白龍は鏡の中、己の足の間で痛々しいほど膨らみ、びくびくと震えている性器に目を落とした。勃起したその先端に突き刺さる金属棒に射精を禁じられ、今日一度も慾を放てていない性器は赤黒く充血して、解放の時を今か今かと待ち侘びている。白龍の目線に気付いた男が手を伸ばし、白龍の尿道に突き刺さったブジーをくい、と小さく動かして、それだけの動きでも電流で打たれたような悦楽に襲われた白龍は、がく、身を仰け反らせた。
「ひゃッ、ぐゥっ、っン!」
ぐちゅ、ぬちゅ、とブジーを抜き差しされて、上体が崩れ落ちそうになるのを、男の腕に抱き留められる。小刻みに手を動かす男が、喘ぐ白龍の耳元に口を寄せ、言い聞かせるような口調で囁いた。
「どうして欲しいか、言ってみろ」
「はやく、んウッ、抜いて、くれ……っ!」
叫ぶように言ったところで、男が白龍を苛む手をぱたりと止めて、ブジーから手を離す。頭を掻き回すような暴力的な愉悦からは解放されたが、射精を堰き止められた苦しみからは解放されず、白龍は乞うように腰を振り、赤く腫れた尻を男に擦り付ける。痺れる尻の皮膚を擦り上げられる痛みも、内臓を突き上げられる圧迫感も気にならないほど、白龍の性器は解放の瞬間を待ちわびていて、白龍はただ、男に許しを乞うことしかできない。
「ぁ、お願いだ、はやく……ッ、」
「もっと分かるようにお願いしろよな」
冷たく突き放すような言葉を浴びせられ、白龍はぐっと唇を噛む。挿入を懇願させられたときと同じ羞恥心が込み上げて、ぶるぶると体が震えた。それでも、どうにか慾を放ちたいという気持ちが遙かに勝って、白龍はあのときと同じように屈辱に唇を震わせながら、卑猥な言葉を口にする。
「お願いだ……尿道の、ブジーを抜いて、俺に、し……射精、させてくれ……」
矜持をかなぐり捨て、隷属の恍惚に浸っていても、今の白龍にはこれが限界だった。顔から火が出るような気持ちでそう絞り出し、鏡に映る己の姿から目を逸らす。そんな白龍の下腹をさわさわと撫でて、男が楽しそうに笑った。
「ま、今日は合格ってことにしてやるよ。次からはもうちょい可愛く強請ってみせな」
「ッ、ひ、ふぅンっ!」
亀頭球の萎んだ男の逸物が、ずる、と唐突に引き抜かれる。ひくつく肛門の襞を厭らしく捲り上げながら肉棒が抜けた瞬間、ぶりゅ、と汚い音と共に緩んだ肛門から男の精液が飛び散って、びちゃびちゃと床に滴り落ちた。足が震え、その場にへたり込みそうになるのを、男に支えられる。それはあまりにも卑猥で屈辱的な姿だったが、肛門を巨大な逸物で拡張されただけでなく、何度も絶頂を迎えさせられた体は、そこに力を入れて自らの醜態を誤魔化すこともできなくなっていた。
「抱えてやろうか?」
「自分で、歩ける……っ」
面白がるような男の手を振り解き、よろける足で鏡の傍らのベッドに向かう。陰茎を玩具で苛まれながら数歩の距離をどうにか歩いたものの、ベッドに辿り着いた体はそのまま崩れるようにシーツへと沈み込んだ。
痛みと苦しみと、そして快楽とでごちゃ混ぜになったものが、頭の中でがんがんと響き渡っている。俯せでベッドに飛び込んだまま荒い息をしている白龍の体を男の逞しい腕が掴み、ぐ、と頭をベッドに押し付けられて、腰だけを高く持ち上げられる。男に尻を突き出すような姿勢を取らされた白龍の、足側に腰を下ろした男が足の間から手を入れて、固く勃起した性器を握り締める。遮るもののない強烈な刺激にびくびくと腰を揺らして、白龍は戒められた性器を男の手に擦り付けた。
「ケツの穴までひくつかせて、そんなにイきたいか?」
男の眼前に曝け出した肛門がはくはくと厭らしく収縮し、どろどろと精液が溢れ、滴る。それを詰る男の言葉にも興奮を煽られて、白龍は自分が、この男に支配され、従属していることを痛感させられる。
「ぁ、ああ、どうか……早く、抜いて、イかせて……」
「違うだろ? アンタ、自分がザーメンぶちまける恥ずかしい姿を見られたいんだろ?」
「ッ、お、俺は……」
じわじわと脳を浸食していく隷属の恍惚。いつしか自分自身がそれを受け入れ、男に言われるまま、淫らな懇願を口にしようとしている。
「俺は……、ぁ、う、射精する……ザーメンを、ぶっ、ぶちまける、俺の姿を、見てほしい……っ!」
「ハハ、よく言えたな。……アンタの姿、しっかり見といてやるよ」
ずぷぷ、と勢いよくブジーが引き抜かれ、金属棒の突起が恐ろしい勢いで尿道を擦り上げ、あまりの快感に白龍の目の前が真っ白に弾け飛ぶ。尿道の中を熱い奔流が一気に駆け上がる愉悦に突き出した尻をがくがくと震わせ、赤く熟れた粘膜を晒した肛門を激しく痙攣させて、白龍は白目を剥きながら絶叫していた。
「ひガッ、おごォ、いッ、イグゥっ! ォほ、ッがァッ、ザ、ザーメンッ、ぃぎィ、でるぅッ!」
これまで行き場のなかった精液が一気に陰茎の中を迸り、尿道口から勢いよく噴出する。あまりの勢いに、飛び散る白濁がシーツだけでなく白龍の体にもぶちまけられて、その白い肌を精液でどろどろに汚しながら、白龍はなおもびくびくと尻を振りながら射精を続ける。ブジーで散々責められていた尿道は精液が流れる感覚にさえも悦楽を感じていて、堰き止められていたというのも相俟って、あまりの快感に射精が止まらない。
がく、がく、と全身を痙攣させて精液を吐き出す白龍の腰を、男の手が鷲掴みにして、ぶぴゅ、と白濁を吐き出している肛門に、灼熱が押し付けられる。射精の愉悦に全身を焼かれながら、白龍は挿入への期待に浅ましく肛門をひくつかせ、腰を揺らして自らの尻を男の逸物へ擦り付ける。
「ッ、ひぐゥ、オぉっ、は、やくッ、っァア、ペニス、をッ、ンひィ、いれ、てェッ……!」
その言葉は絶対的な支配者への、従属を示す何よりの証だった。半ば無意識で飛び出た言葉に、先端をつぷりと肛門に押し込んでいた男の逸物がむくりと膨れ上がる。みち、と肛門の襞を無理矢理広げられる感覚、男が白龍の腰を掴む手により一層の力を込めて、その直後、圧倒的な質量の熱が裂けそうなほどに肛門を割り開いて、どずんと最奥を抉った。
「ぁ、ふ、」
限界まで直腸を拡張し、結腸を突き上げる男の性器。暴力的なまでの快楽に頭を、体を揺さぶられ、白龍の意識が一瞬飛びかけて、ずる、と性器を半分ほど抜かれ、蕩けた内壁を容赦なく掻き回され、再度ばつんと結腸を突かれ、もう何も考えられなくなって、白龍は体を抉られるたび、壊れたように喘ぐことしかできなくなっていた。
「ッい、イくっ! ぅごッ、っほォ、いぐッ、ぁがアっ!!」
「っ、ハ、アンタ、ずっとイきっぱなしじゃねえか……」
「ぉ、ぉゴッ、も、むり、イぐぅ、イく、のッ、どまら、なッ、あぐ……!」
ぱんぱんと腰を叩きつけられ、内臓の一番奥を突き上げられるたび、全身を快楽が走り抜けて、びゅる、びゅる、と精液が、尿道の中を流れ出て行くのが分かる。自分の体を自分自身でも制御できなくなっていて、白龍は男のされるがままに揺さぶられ、突き上げられ、劣情の全てを搾り取られるように、陰茎からぼたぼたと精液を垂れ流し続ける。ぶじゅ、と結合部で白濁の泡立つ音、男も中を掘り起こすようにその灼熱の杭で白龍の腸内を抉り、白龍の突き出した尻に腰を打ち付ける。幾度となく叩き据えられ赤く腫れ上がった尻は、男の肌がぶつかるたびに痛み混じりの快楽でぶるぶると震えて、男の陰茎をしっかりと銜え込み、突き上げによる快楽を貪っている。
「ひゃぐッ、ひ、ィ、ぉご、」
男の腰の動きで前立腺をほじくり回され、絶えることなく射精に導かれる恍惚に、白龍の意識が遠く霞んでいく。快楽にじんじんと痺れ、靄がかかったようにぼんやりとした頭は、己の腹の底からぞわりとこみ上げる違和感に一瞬、気付かなかった。びゅる、と尿道をすさまじい勢いで込み上げる液体、射精とは何かが違うそれをおかしいと思ったときにはもう遅く、ぶしゃあ、と派手な音がして、白龍の陰茎から生温い液体が思い切り飛び散った。
「ぃ……ッ、や、やだ、うそ、ちが……!」
じょろじょろと聞くに絶えない水音、体の下から独特の臭いが立ち込め、状況を把握した白龍は羞恥のあまり大声で叫ぶ。だが生理的な現象を中断することなど叶わず、白龍はベッドの上、男に犯されながらの放尿を止めることができない。玩具で蹂躙され続けた尿道が液体の迸る感覚だけでおぞましいほどの快楽を覚え、男の逸物を銜え込む腸壁がびくびくと痙攣を繰り返し、失禁による羞恥と興奮に打ちのめされていた白龍は、男がぴたりと動きを止めたことで一気に我に返った。
「あ、ちがう、お、怒らないで……お願い、だ、どうか、」
濡れたシーツの臭いと冷たさに、絶望と恐怖とが膨れ上がって、白龍は怯えたように男を振り返る。男が呆然とした表情で固まっているのを見て、そこに過去の記憶が重なって体ががたがたと震え始めた。あの男はこうした粗相を酷く嫌った――忘却することのできない折檻の記憶が蘇って、怒られるという確信に取り付かれて、白龍は縋り付くような目で男を見つめる。
男はしばらくの間、無言で固まっていた。その顔に怒りの色が見当たらないことに気付いて、恐怖で跳ね上がった心臓が幾分か落ち着いた白龍は恐る恐る、探るような目を男に向ける。その精悍な顔に徐々に広がっていく困惑の色と、そしてちりちりと燃え上がる、劣情の色。白龍がその意図を読めないでいる間に、男がぐっと身を乗り出して、白龍へと覆い被さるように体勢を変えた。
「ぐっ、ンふぅ……ッ!」
その逸物がより奥へと突き刺さって、内臓が思い切り押し上げられて、白龍は喉からひしゃげたような声を漏らす。己の内側に収まった性器が見る間に膨れ上がって、直腸を限界まで拡張される感覚にがくがくと痙攣が止まらない。男が白龍の肩を掴んで、その手にみしりと力を込めながら、いよいよ白龍へ圧し掛かるような姿勢になる。は、は、とまるで獣そのもののような熱い吐息が白龍の鼓膜を揺らし、男の慾が、白龍の中でむくむくと成長していく。
「いや、その……別に、怒らねえっていうか……」
「ッ、おま、え、」
「その……悪い、ちょっとな……めちゃくちゃ、興奮しちまった……」
劣情でどろどろに溶けた声色でそう囁いたかと思うと、男がその腰を白龍の尻へ、どずんと思い切り打ち付けた。
「ぁ、何、言って、ッほ、ぉごオッ!」
これまでにないほど膨らんだ陰茎に結腸を破るのではないかという勢いで突き上げられ、白龍の視界が衝撃でちかちかと瞬く。白龍の粗相にどうしようもなく欲情したらしい男に容赦なく腰を打ち付けられ、その凶器のような陰茎で何度も何度も最奥を責められて、限界を超えた快感に白龍は声を上げることもできなくなっていた。男が突き上げるたびに白龍の陰茎からびしゃ、と透明の液体が飛び散る。暴力的なまでの快感で射精させられ続け、精液が搾り取られて残っていないのだ。人形のようにされるがままの白龍に、男がぱんぱんと何度も腰を打ち付け、そしてその体を思い切り抱き締めながら、どぴゅ、と勢いよく精を放った。
あまりの愉悦に意識が混濁する中、白龍の最奥にどぽどぽと精液が注がれていく。膨らんだ亀頭球に肛門をめりめりと拡張され栓をされて、長い長い射精を受け止めて、自分がこの男に支配されているという現実を、体が受け入れていく。まるで自分が、種付けされる雌になってしまったかのような錯覚。そんな屈辱的な行為も悦に感じてしまうほど、白龍の体は男に調教されていた。
「っ、は、あァ……」
白龍はまだ夢見心地のような状態で、ゆらりと腰を振る。叩き付けられるような快感の渦から次第に解放されて、じわじわと広がる快楽の余韻に体が包まれつつあった。がつがつと腰を打ち付け快楽を貪っていた男の唸るような荒い呼吸も、次第に落ち着きを取り戻している。白龍を抱き締めていた手がその汗ばんだ首筋をそろりと優しく撫でて、ぴく、と思わず震えた耳元で、熱の籠った男の声が響いた。
「あー、マジで、俺、どうかしてるかもしんねえ……」
「何が……」
「アンタが漏らすの見て、すっげえ興奮した」
「この、変態……」
己の体の下、シーツに沁み付いた尿の臭いが絶頂の余韻に溺れていた思考を現実へと引き戻し、一気に羞恥心が込み上げる。あまりの屈辱に今すぐ逃げ出したかったが、肛門を裂きかねない勢いで膨れ上がった亀頭球のせいで動くこともできず、白龍はベッドに顔を埋め、掠れた声で悪態をついた。声の出し方を忘れるほどに喘がされて、蹂躙された体中がじんじんと軋むように痛んでいる。そんな白龍へと覆い被さって、男が繋がったままの腰をゆるりと動かし、白龍の尻へと擦り付けてくる。直腸に溜まった精液がじゅぷじゅぷと掻き混ぜられる音、体内を貫く巨根に再三の肛虐で蕩け切った腸内を掻き回され、白龍はびくびくと体を震わせる。
「アンタだって、漏らすくらい気持ちよかったってことだろ」
「っ、うご、くなッ……!」
骨の髄まで男に開発されつつある体が、男のほんの僅かな動きにも反応し、その逸物を銜え込む肛門がひくひくと厭らしく収縮する。息が上がる白龍の首筋に男の指が這わされ、ざらついた舌でれろりと舐められて、瞬く間に悦楽の海の中へ沈んでいく白龍の耳元で、男が熱っぽく囁いた。
「本当、すげえ良いよ、アンタ」
「……っ」
たった二回のセックスで体に刻み込まれた従属の愉悦と被虐の興奮とに、白龍は身を震わせながら、深い深い快楽の底にまたもや沈み込んでいくのだった。
* * *
シャワーで綺麗に洗い流した体にバスローブ一枚を羽織った格好で、白龍はソファーへ寝転がった。
クローゼットに片付けた服を取りに行く気力がなかったから、白龍は今、下着も穿かずにバスローブだけを纏っている状態だった。男に介助されるのは癪だったし、いくら何でもそこまで軟弱ではなかったから、シャワーを一人で浴び終えてバスローブを羽織ったのは良いものの、散々責められ続けた尿道や何度も叩き据えられた尻はじんじんと痺れ、その柔らかい布地が肌を少し掠めるだけでも敏感に刺激を拾い上げてしまう。しばらくは用を足すのも一苦労だろうし、その度に今日の醜態を思い出してしまいそうだ、と白龍は深い溜息を吐いた。愉悦のあまりに放尿して、それを興奮されるなんて、思い出しただけで羞恥で死にたくなる屈辱だった。
己の失態で盛大に汚したベッドをとても使う気になれず、疲労困憊した体をソファーに沈めていた白龍は、寝室の扉が開く音に気付いて顔を少し上げた。シャワーを浴びた男が同じバスローブを羽織って、ソファーへと近付いてくる。白龍が足を投げ出している端の方へ体をずらすと、男がその頭の側に腰を下ろして、獣の瞳孔をした目でじっと白龍の顔を覗き込んだ。
「怒られたこと、あんのか?」
ひゅ、と息が詰まるような心持ちがして、白龍は男から目を逸らす。男が何を言いたいのかはすぐに分かった。けれどもその話を、混ぜ返したくはなかった。決して思い出したくない過去を、わざわざ掘り起こす必要などないのだから。
「……昔の話だ」
「あー、なんだ、悪い。嫌なこと聞いちまったな」
白龍の様子で何かを察したのだろう、それ以上のことを男は尋ねてこなかった。その代わり、無骨な手で白龍の長い髪を弄り始める。何かを言いあぐねるような間があってから、やがて男がぽつりと口を開いた。
「キスして良いかって聞いただろ、俺」
「ああ」
「昔、気持ち悪いって言われたことがあってさ」
白龍が視線を戻した先、男の目が微かに泳ぐ。この男のあまりにも獣性の強い体のせいで、拒絶されることも多かったのだろう。互いに多くを語ることはないが、過去の嫌な記憶に囚われているのは、二人とも同じなのかもしれなかった。
「別に、俺は気にならなかったが」
白龍の返事を聞いた男がぱちりと目を瞬かせてから、ほっとしたような顔で白龍を見下ろす。大きな手が白龍の髪から離れて、バスローブの下、色の白い胸板をそっと撫でた。指が肌の上を往復するこそばゆい感覚に、白龍は目を細める。まだセックスの余韻を引き摺る体は、この愛撫だけでもじわりと熱を帯び始めてた。
「今度から、体、舐めても良い?」
「……好きにしろ」
込み上げる劣情を悟られないよう、なるべく平静を装って素っ気なく返事をする。すると男は胸元に遣っていた手を、白龍の下腹部へと進め始めた。ただ羽織っているだけのバスローブの下に容易く侵入し、太い指が足の付け根を緩やかに撫でる。その柔い刺激にぞわぞわと劣情を掻き立てられ、ぐ、と息を堪える白龍は、その指で未だひくついている肛門の縁をくちゅ、となぞられ、飛び出しそうになった喘ぎをどうにか噛み殺す。
「なあ、次は中洗わずに来いよ」
「なん、で」
衝撃的な言葉に目を見開いて見上げた男の顔は、セックスの最中と同様、人の悪い笑みを浮かべていた。
「そしたら俺が洗ってやるからさ」
「冗談もほどほどに、しろっ」
かり、と指先で熟れた皮膚を引っ掻かれて、思わず声が跳ねる。そんな反応を面白がるように、男の手が次第に上へと戻ってきて、おもむろに性器を握られる。何度もほじくり回されて敏感になった尿道口を指の腹でぐに、と揉まれ、白龍は耐えられずにびく、と全身を仰け反らせた。
「ンゥ、っ……!」
「その顔、ほんと堪んねえ」
呼吸を乱しながら見上げれば、舌なめずりをした男が白龍へと顔を近付ける。その逸物をやわやわと扱きながら、目と鼻の距離に顔を寄せた半獣人の男が、まるで睦言を囁くように、熱い吐息を漏らした。
「アンタが恥ずかしいことされて感じてる姿、めちゃくちゃエロいんだよ」
「うる、さい……」
「アンタだって、気持ちいいんだろ? だったら俺にもそれ、見せてくれよ」
「っ、」
白龍はぐっと息を呑み、熱を孕んだ目で男を見ることしかできない。男の言葉に、逆らえないのだ。隷属の快感を体に刷り込まれ、より強い雄の言いなりになることに悦びを感じてしまう。たった二回のセックスだけでそう刻み込まれるのなら、これから先、自分はどうなってしまうのだろう。
「俺は、アンタが何しても怒らねえよ」
優しく囁いた男に唇を奪われ、ざらつく長い舌で口内を舐め回される。その口付けを受け入れながら、己に拒否権がないことを改めて痛感した白龍は、その事実にさえも暗い興奮を覚え、ぞくりと身を震わせてしまうのだった。