花に溺れる

 正月の飾り付けを片付けると同時に、島田家の使用人たちはいそいそと離れの支度を始めた。
 屋敷の敷地の中にある小さな離れは、先代の当主が隠居した際に建てたもので、その中で暮らしが十分に完結できるよう、大抵の調度が揃っている。さしずめ小さな一軒家のような離れではあるが、日頃から使用人たちが手入れを欠かさず行っていることと、屋敷の主であるカンベエが華美な装飾を好まぬこともあり、丸一日もあれば正月飾りの片付けと離れの支度が整ってしまった。
「随分と積もりましたね」
 縁側と部屋とを仕切る障子を薄く開け、庭を見遣りながらそう言ったのはシチロージである。カンベエが彼と共に離れへと移ったのは一昨日のこと。この新年を迎えたばかりの雪深い冬に、カンベエはここでシチロージと二人きりでの生活を始めていた。
 二人きりといっても、炊事洗濯などの大抵の仕事は使用人たちが行ってくれている。だが大勢の使用人が行き交う屋敷とは違い、離れは最小限の者が交代で出入りしており、二人が彼等と顔を合わせる機会はほとんどない。そしてそれこそが、カンベエとシチロージがこの時期に離れへと移り住む一番の理由だった。
「今年は一段と雪が深いな」
「ええ、本当に」
 しばし外を眺めていたシチロージが、やがて身震い一つをしながら、ぱたりと障子を閉じる。それからカンベエを振り返ると、その傍らにしずしずと歩み寄ってきた。
 カンベエの隣に坐して、そしてさも当然のように腕を伸ばし、カンベエの体躯を抱き締めてくる。冬の空気で少し冷えた体温。カンベエを覗き込むシチロージの白皙の頬は、寒さの故かほんのりと赤くなっていた。こちらを向いた碧眼の奥、獰猛な獣の光がほんの一瞬浮かんだかと思うと、瞬きと共に消えていく。
「カンベエ様、寒いです」
「うむ」
 カンベエよりは幾分か細身の、ただ細いだけでなくしっかりと引き締まった体が、カンベエへぴたりと寄り添って離れない。そんなシチロージに応えるように、カンベエもまたシチロージの背へ手を回し、そっと抱き寄せる。
 彼の体温が、背を撫でる指の感触が、耳元の息遣いが、堪らなく愛しく、離れ難い。結局のところ、本能が互いを求め合っているのだ。互いにとって特別な存在である相手を欲し、慈しみ、誰にも渡したくないと思ってしまう。そう求めてしまう時期だからこそ、カンベエはシチロージと、誰とも顔を合わせぬ離れでこうして生活を始めている。
 そもそも、島田カンベエは人間ではない。この辺り一帯を治める、悠久の時を生きる化生の存在である。
 この世に生きるあやかしの中でも、獣として生を享け、歳月を重ねて人へと転じるものを、総じて化生と呼ぶ。カンベエはその昔、一羽の鷲としてこの現世に生まれ、やがて化生へと転じ、先代の主の跡を継いで島田家の当主となった。
 シチロージは、そのカンベエがある折に拾った人間の子供だ。彼が拾われた経緯やその後の紆余曲折はまた別の機会に語るとして、シチロージは成長するにつれてカンベエと想い合うようになり、その結果、彼は人でありながら化生へと転じ、そしてめでたくカンベエの伴侶となったのである。
「カンベエ様……」
 穏やかな声で名を呼びながら、シチロージがカンベエの胸元に頭を擦りつける。彼が転じたのは豹という、、唐国の遥か北方に住まう金色の斑の毛並をした獣で、その獣の持つ性質がこの時期には殊更強く表れる。ごろごろと喉を鳴らしかねない勢いで擦り寄るシチロージはさしずめ大型の猫のようで、そんなじゃれつく伴侶に応えるように、カンベエは彼の美しい金糸の髪を梳いた。
 伴侶を得て番(つがい)となった化生には、一年の内にひと月ほど、特別な時期が訪れる。化生の中で『番う時期』や『番の時期』と呼ばれるその期間は、二人がより一層激しく求め合い、互い以外の何事をも考えられなくなってしまうのだった。更に、男同士や女同士の番に至っては、その時期に差し掛かるとどちらか一方の体が変化することさえある。そうした知識を、化生となって久しいカンベエは元々持ち合わせていたものの、いざ己が伴侶を得て初めてその心身の変化を実感したのだった。
 ――きっと、もう直ぐだ。
 シチロージを抱き締め、その柔らかな金髪を撫でながら、どこか浮ついた頭でカンベエは思う。恐らくあと数日も経たぬうちに、番う時期が訪れる。その時期特有の貪欲な本能に少しずつ体と心が呑まれているのを、カンベエも、そしてシチロージも感じているのだ。
 愛しい伴侶を誰にも触れさせたくないという独占欲が恐ろしく強くなるため、二人はその時期の間はこの離れに移り住むことにしている。そして本格的な番う時期を迎えるまでの数日は、こうして体を寄り添わせ、互いの温度を感じるだけで済ませることが多い。一たびその時期が訪れれば、もう何も考えられず本能のままに互いを求めてしまうから、それまでの間は、互いの心の中に燻る穏やかな熱を絶やさぬ程度に肌を寄せ合うのだった。
 だからその日の夜も、褥に入ったカンベエはシチロージとそっと口付けを交わし、抱き締め合ったまま眠りに落ちた。

 離れへと移って四日目の朝、目を覚ましたカンベエは、己の体がいつもと異なっていることに気がついた。
 目を閉じたまま、遂にこの時期が来たのだ、と未だ眠気の残った頭で思う。抱き合っている己の伴侶の胸元へ、そっと顔を寄せた。常日頃から愛しく思っているシチロージを、番の時期は殊更に欲してしまう。寄せた頬から伝わる温度さえも、カンベエの体の内に不埒な熱を点して、目の前で未だ眠っている伴侶が欲しくて仕方なくなってしまうのだ。生殺しのような感覚に懊悩の籠もった息を吐き出していると、ごそ、と己を抱き締める青年が身じろいだ。
「ん……」
 頭上で声がして、カンベエはそっと顔を上げる。シチロージがゆっくりと目を開き、カンベエを見つめる。その空のような碧眼の内に、獰猛な獣の光がはっきりと宿って、その直後にカンベエはシチロージの腕に肩を掴まれ、敷布の上にぐっと縫い止められていた。
「カンベエ様」
 低く心地良い声が、カンベエの名を呼ぶ。カンベエの上にシチロージが覆い被さって、さらりと零れる金髪の間から、情欲に濡れた碧眼がちらちらと見え隠れする。その艶っぽい光に体の芯が熱くなってごくりと唾を飲むカンベエに、シチロージが顔を近付ける。
「桃の花の、香りがします……」
 ぽつりと漏れる言葉に籠もる、隠しようのない熱。カンベエはシチロージの言葉に、番う時期が来たのだと確信した。シチロージはいつも、その時期を迎えたカンベエに季節外れの桃の香を感じ取る。己の体に変化が生じたように感じたのは気のせいではなかったのだと、どこか霞のかかったような頭でぼうっと考えていると、シチロージが顔を寄せるまま、カンベエへと口付けてきた。
 唇の距離が近付き、ぴたりと重なる。舌が絡み合い、混ざり合う唾液が、まるで甘露のように感じられて、その甘さにくらくらと酔い痴れながらカンベエはシチロージの頭に手を回し、ぐっと引き寄せる。己の全てが、シチロージを求めてやまない。シチロージも同じなのだろう、カンベエの頬を両手で抱えるようにして、唇を合わせ、舌を這わせ、口内を貪る。
「……シチ、」
 やがて唇が解けて、カンベエはシチロージの頬に手を添えると、乱れた呼吸の中で囁くように己の伴侶の名を呼んだ。その声にさえ情欲を掻き立てられるのだろう、青年が悩ましげな顔できゅっと唇を噛んでから、そっと体を起こす。
 その体温が離れることに名残惜しさを感じたのはほんの束の間。シチロージに寝間着の帯を解かれ、露わになった下帯をも瞬く間に暴かれて、気付けばその足の間に割って入られていた。あ、と声を上げる間もなく膝裏を掴まれて両足を持ち上げられ、その陰部を余すところなくシチロージへ見せつけるような格好になって、羞恥で顔を赤らめるカンベエの股の間に、シチロージが躊躇なく手を伸ばしていく。
「ふあ、ァ」
 白い指先が、カンベエの雄をきゅっと握る。敏感な場所を触られて嬌声を漏らすカンベエの、逞しい竿と柔らかなふぐりが持ち上げられる。そこには、番う時期にのみ表れる、カンベエの雌の部分――桃の香にしっとりと濡れる女陰があった。その襞をシチロージの指が這った瞬間、カンベエはびく、と身を仰け反らせる。
「あッ、し、シチっ……」
 体の内側から、とろりと蜜が溢れ出るのを感じる。番であるシチロージを受け入れたいと、体の奥底が疼き、口を開けた割れ目から蜜が滴る。そんなカンベエの様子を愛おしげに見つめるシチロージが、その割れ目へと白皙の顔を近付けて、その直後、女陰の部分を熱い舌が舐めて、カンベエは悦楽に耐えられずぎゅっと敷布を握り締めた。
「ひゃう、ゥっ」
「ああ……カンベエ様の、とっても甘い……」
 陶酔したようなシチロージの声がして、ぴちゃぴちゃと濡れた音を立てて舌が這い回る。女陰の襞を、小さな突起を、舌が優しく舐めるたびに、蜜が溢れてとろとろと零れ落ち、シチロージがそこへまた舌を這わせる。無限に続く繰り返しの、あまりの気持ちよさに目が回りそうになりながら、カンベエは開いた両足をだらしなく痙攣させ、シチロージの愛撫に溺れる。カンベエの逸物もその悦楽にしっかりと反応して固く勃ち上がり、その先端からしとどに蜜を垂らし始めて、それを見て取ったシチロージが微笑むと、上目遣いになってカンベエをちらりと見遣った。じくじくに蕩けた碧眼で射抜かれ、カンベエの腹の奥がシチロージを欲して痛いほどに疼いてしまう。
「こちらも、お舐めしますね」
「ああ、ッ、ひゃンっ!」
 言うなり女陰から這い上がった舌が、陰嚢の裏を通り、いきり立つ竿の根本へ。滴り落ちる蜜を一滴残らず舐めるようにしながら、裏筋をゆっくりと舐め上げていく舌の動きに、カンベエは愉悦のあまりがくがくと身を震わせる。竿の先からも、割れ目の奥からも、しとどに蜜が溢れ出して、いくら舐めても尽きることがない。その露を執拗に舐め続けるシチロージに、次第にもどかしさが募る。こんなものでは、足りない。もっと、他のものを。そんな思いに突き動かされて、カンベエは震える手で己の股間に顔を埋める伴侶の頭を押し遣った。
「カンベエ様?」
 愛撫を中断させられたシチロージが、幾分不機嫌な顔でカンベエを見上げてくる。未だあどけなさの残る青年の、赤く上気した頬にカンベエはそっと手を添わせた。自分の頬も熱を持っているから、きっと同じくらいに赤くなっているのだろうとカンベエは思う。そして頬以上に、カンベエの体の奥が逃しようのない熱を孕んでいるのだった。
 先程まで這わされていた舌よりも、もっと太くて逞しいものが欲しい。シチロージの大きな熱で貫かれ、その全てを受け入れて感じ取りたい。カンベエは潤んだ目でシチロージを見据え、声を震わせながら絞り出すように囁く。
「シチ……早く、おぬしが、欲しい……」
 そう告げた瞬間、シチロージが三秒ほど硬直し――そして次の瞬間、開いた太股をこれ以上開かぬというほどに強く押さえつけられた。
 身を乗り出すようにしたシチロージが、ぎらついた目でカンベエを見下ろす。しなやかに引き締まった色白の体躯、その下腹部の雄が天を向いてそそり立っているのが見えて、カンベエは高まる期待にごくりと喉を鳴らした。その先端が、ぬるりと蜜を垂らす女陰に押し当てられる。それだけで狂おしいほどの興奮を覚えて、カンベエは己の腰を掴んでいるシチロージの手をぎゅっと握り締める。
「カンベエ様」
 ふうふうと、噛み締めた歯の隙間から息が漏れている。獣の目をしたシチロージが、ここへ来て己の衝動を必死に宥めようとしていた。カンベエに負担をかけまいとしているのか、かちかちと震えながら歯を食い縛る様があまりにもいじらしく、愛おしい。カンベエは汗で濡れた顔で己の伴侶を見上げると、彼を気遣わせぬよう、口元になるべく穏やかな笑みを浮かべてみせた。
「そう、耐えるな……」
「っ、」
「言っただろう、儂もおぬしが、欲し、」
 言葉は、最後まで紡ぐことができなかった。
 獣の咆哮と共に、シチロージが思い切り腰を打ち付け、その逞しい雄で力強くカンベエの女陰を貫く。肉の襞が容赦なく割り開かれ、戦慄く膣の奥底を逸物で突き上げられ、カンベエの全身が仰け反った。目の前が真白く弾け、全身ががくがくと震える。あまりの愉悦に、呼吸も碌に、できなくなる。
「ぁ、……ッ、う、ァ、」
 シチロージを締め付ける膣から蜜が飛び散ると同時、カンベエの逸物からどぷ、と溢れ返る白濁。襲い来る絶頂に気が遠くなりながら、カンベエは喉を反らせ、シチロージの手を強く握り締めていた。シチロージが歯を食い縛る音がして、腰を掴んだ手にいっそうの力が籠もる。カンベエが息もつかぬ間に、シチロージが腰を動かし始め、はちきれんばかりに膨らんだ男根が、カンベエの体内を容赦なく抉り始める。
「っは、ひァ、ああッ……!」
「ハ、ぁあ、カンベエさま、っ」
 溢れる蜜が掻き混ぜられ、泡立って、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音をかき鳴らす。ぎりぎりまで引き抜いては腰がぶつかるほど奥まで突き入れられ、体の内側をごりごりと掘削される。奥を穿たれるたび、カンベエの全身に電流のような快楽が走り、ひっきりなしに喘ぐその上で、シチロージが無我夢中で腰を振り続けている。思考を熱で侵されながら見上げる先、びっしょりと汗の浮かんだ己の伴侶の秀麗な顔。番の限界の近さを見て取ったとき、カンベエは本能のまま、自ずと強請るように口を開いていた。
「はやく……っ、おぬしの、子種を、ッあ、ひァう、」
「ッ、ええ、勿論です、とも、」
 瞠目したシチロージが愛しげに微笑み、そしてカンベエの最奥を突き上げる。全身が快楽に呑み込まれて、声もなく背筋を撓らせて精を放つカンベエとほぼ同時、シチロージも獣のような唸り声を上げながらカンベエの内側へと精を注ぎ込んでいた。
 どく、どく、と己の体内がシチロージの子種で満たされていく感覚に、カンベエは恍惚の表情で己の腹を撫でていた。己の吐き出した精で手が汚れるのもまるで気にならない。愛しい伴侶が自分の中に精を注いでくれたことへの悦びで満たされて、カンベエは夢見心地でシチロージを見上げる。精を注ぎ終えたシチロージが荒い呼吸をどうにか整えながらカンベエを見下ろし、情欲でどろどろに溶けた視線同士が絡み合い、それから互いに誘われるまま、唇を重ね合う。
「ンン、っ、」
 くちゅ、と混ざり合う唾液の甘さが、只でさえ蕩けた頭を更に恍惚で溶かしていく。汗と精とで濡れた体を密着させ、角度を変えて唇を重ねる間にも、シチロージの手がカンベエの胸へと伸び、日頃より幾分柔らかみの増した胸を揉みしだく。きゅうと指先で胸の尖りを抓られ、痺れるような悦にびくりと肩を跳ねさせれば、合わせた唇の狭間で、くす、とシチロージが笑みを漏らす気配がした。
「あ、……」
 ほんの少し意地の悪いところにさえ、この上ない愛しさを覚えてしまう。唇を解放されたカンベエは切なげな吐息を漏らしながら、自分を抱き締めている青年の顔を見つめた。立派な美丈夫に成長した己の番の端麗な顔立ちは、それだけで酷くカンベエの劣情を煽る。未だ繋がったままの部分が、そして未だ繋がっていない部分までがじくじくと疼き始めて、カンベエはシチロージに押し付けるように腰を揺らす。
「もっと、欲しいんですよね?」
 分かり切ったことを尋ねる伴侶と、返答代わりの口付けを交わしながらも、カンベエはその疼きに次第に耐えられなくなりつつあった。シチ、と呼びかけながら潤んだ目で見つめれば、何かを言いたげな雰囲気を察したシチロージが不思議そうに首を傾げる。カンベエは一呼吸置いて自分自身を落ち着かせてから、シチロージの腕の中から逃げるようにして己の腰を動かした。
「ひァ、」
「っ、くぅ、」
 ずる、と肉同士が擦れ合う淫らな感触。互いの口から、耐えきれずに零れ落ちる甘い声。カンベエはどうにかシチロージの逸物を女陰から抜くと、状況を未だ掴めないでいるシチロージの前で俯せになって、自らの手で尻を掴み、その肉を割り開いてみせた。
「ッあ、」
 カンベエの指が自ら触れる、女陰からの蜜ですっかり濡れそぼった菊座。指が掠めるだけでその疼きが大きくなり、カンベエは喘いでしまう。日頃の――番う時期ではないときの夜伽でシチロージの慾を銜えている後孔が、シチロージを欲して淫らにひくひくと蠢いて、そんな蕾を自らの指でくちりと開き、息を呑むシチロージへと見せつける。これほど大胆なことは普段なら決してできないが、発情し、欲に溺れた今は別だった。愛しい伴侶の熱を受け入れることしか考えられなくなって、カンベエは濡れた目でシチロージを振り返り、ぬらぬらと腰を揺らす。
「こちらにも、挿れて、くれぬか……」
 呆けたようにカンベエを見つめていたシチロージの表情が、徐々に笑顔へと変わっていく。カンベエに被さるような格好になって、全く勢いの衰えぬ逸物をひくつく菊座へと押し当てる。くぷ、とその先端がめり込む感触にさえ、カンベエは淫らな声を零し、浅ましく尻を揺らしてしまう。
「こんなに濡らして、ひくひくして、はしたない……」
「ァあ、だって、おぬしが、ほしぃ……ッ」
 ぐっと肩を掴まれ、みち、と熱の切っ先で菊座を割り開かれる。思わず仰け反るカンベエの逞しい体をしっかりと抱き締めて、シチロージの欲に燃え上がる声が、耳元でそっと囁く。
「これだけ濡れていれば、慣らさずとも、大丈夫ですね」
「んぁ、そ、れは……ッ、やさしく、して、くれ、あァんっ」
「ええ、分かっています」
 シチロージがゆっくりと腰を進め、聳え立つ男根でカンベエの蕾を貫いていく。緩やかに、だが確実に体内を押し広げられ、シチロージの熱をゆっくりと銜えさせられて、カンベエは腰をびくりと跳ねさせながら敷布を強く握り締めた。そんなカンベエの手の上にシチロージの手が重なって、腹を押し上げる圧迫感と恍惚に震える中、カンベエの尻にシチロージの腰がぶつかる感触がする。
「全部、入りましたね」
「っ、あ、シチ……ッ」
「大丈夫、ゆっくり、動くから」
 囁いたシチロージが腰をそっと動かし始め、その肉棒に腸内を擦られる感覚にカンベエはびくんと身を仰け反らせる。カンベエの負担とならないよう控えめに始まった抜き差しは、カンベエの体が慣れる頃にはどんどんと激しくなってゆき、獣のように這いつくばったカンベエはやがて、きゅうきゅうとシチロージの逸物を締め付け、腰をぱんぱんと打ち付けられる悦楽に甘く淫らな声を上げていた。
「あんッ、ひゃゥ、ひぃア……!」
「くっ、ああ、カンベエ、様、」
 菊座の縁が捲れ上がるほどに激しく突き上げられ、内臓の奥深くを的確に穿たれる。それがあまりにも気持ちよくて、カンベエは腰を揺らして恍惚に喘ぎながらシチロージを強請る。それに応えるようにシチロージの動きがますます激しくなり、ごり、と体の奥を突き上げられて、その瞬間、カンベエの全身が撓り、目の前にちかちかと星が瞬く。
「ああァっ……!!」
 男根から精が飛び散るのと襞の割れ目から蜜がしぶくのがほぼ同時。その瞬間にぎちりとシチロージを締め付けて、ぐっと息を堪えた青年がカンベエの中に精を放つ。どくどくと注ぎ込まれるその熱に狂わされ、カンベエは震えながら繋がっている腰をシチロージに擦り付ける。体が、心が、世界にたった一人の番を求めて止まらない。言葉も碌に紡げずにシチロージを振り返れば、獣の笑みを湛えた青年が、ずる、とその肉棒をカンベエから引き抜く。
「ひゃウんっ、」
「こちらも、寂しいでしょう?」
 笑みを含んだ声と共に、女陰に押し当てられる雄の切っ先。期待に震えるカンベエがこくりと頷くや否や、逞しい男根で濡れそぼった襞を貫かれ、カンベエは淫らな嬌声を上げながら、シチロージの熱に溶けていくのだった。